杓子blog

杓子による猫のための

5本の針と裏ボスMさん

健康診断で病院に行った私は

前夜から食事制限を指示されていたので

「検診後には何を食べようか」と検診を行う病院へ向かう電車内で

駅周辺の飲食店を探していた。

 

 

 

長丁場になるなんてこの時は知る由もない。

 

 

 

受付や着替え、身長体重測定、診察などをこなし

残るのはレントゲンと採血。

採血を先にやることになったので

台に右腕を乗せる。

 

用意された針がキラリ、私を睨む。

強がりの私だが、一応礼儀作法として針の行方は見ないようにした。

 

 

 

「んんんー針、入らないかも」

 

腕を擦る看護師がそういった。

 

私は血管がもともと細く、またここ最近の体重増加により

腕の血管が採血には不向きの状態に陥ってしまっていたのだ。

 

 

1人目同年代女性看護師S

「ごめんね・・・右じゃ出ないから左ね」

「ごめんね・・・左もだめだから他の人呼ぶね。もしかしたら手の甲になるかも」

 

 

手の甲で採血・・・?

同じく血管細い族の母親が致し方なく手の甲で採血したところ「すごい痛い」と

言っていたあの手の甲・・・?

 

(手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ手の甲は嫌だ・・・)

 

S「すみません、Iさん、採血お願いできますか?」

 

冷や汗をかいている間にSさんは別室にいた看護師を呼んでいた。

 

 

 

2人目40代女性看護師I

「ごめんね・・・右はやっぱりだめだわ」

「ごめんね・・・左もだめだわ」

彼女に関しては、針を血管らしきところに刺しそこから金脈を探しあてるかのように

針をぐりぐりと動かした。

でも不思議と痛くなかった。

看護師2人のプライドをズタボロにさせるような血管を持つ自分が憎くて憎くて

心のほうが痛かった。

 

                     

 

                     案外、何も思っていないかもしれない。

 

 

 

 

 

この女性看護師はおもむろに携帯電話を取り出し電話をし始めた。

自衛隊でも呼んだのか?

国防に関わることなのか?

と思っていると

3人目50代女性看護師Mが登場

 

 

 

「ごめんね・・・あ、深呼吸してー。ハイ、終わり」

 

 

 

・・・・・・えっ!?

いつの間にか金脈を当てられごっそり金塊を持ち帰られていた。

 

別に看護師の採血に対して文句を言うつもりはないが

Mさんに関しては、刺したあと深呼吸の指示があった。

私自身、採血が上手く進まないことに恥を感じてしまいそれが身体の緊張に繋がって

しまっていたようだ。

あの単純な深呼吸だけで終わったのですごく驚いた。

刺した針は5本、時間にして20分程度。

 

 

何も食べずに帰った。